2016年12月12日月曜日

重ね茶碗 茶事 今と昔

現在の「重ね茶碗」(島台茶碗も含む)は、多人数の客に濃茶を振舞う為のものであるが、
昔の重ね茶碗は、小人数の客にも用いられた。

天王寺屋会記には、
永禄11年(1568年)5月11日の津田宗及の自会(客3人)の茶事で、
「灰被天目 志野茶碗 二ツ重而茶立候」 (灰被り天目 志野茶碗 二つ重ねて茶点て候)
と出ている。

灰被天目茶碗と志野宗信旧蔵の青磁茶碗の唐物2椀を二つ重ねて持ち出して点前をしている。

重ね茶碗の点前は、室町時代から既に行われていたのが分かる。

江戸時代後期(文政10年11月、1828年)にも、十代 吸江斎が紀州徳川家 治宝公に、旦入作の小振りの島台茶碗でお茶を差し上げているので、まだこの時代にも小人数の茶事にも重ね茶碗が使われているのも分かる。


天王寺屋会記 :
堺の豪商 天王寺屋 津田宗達・宗及・宗凡三代の自他会記。
1548年~1590年。

下記も参照
2014年11月9日 「島台茶碗 如心斎 重ね茶碗
2015年12月23日 「重ね茶碗 島台茶碗 客の作法
2015年12月23日 「重ね茶碗 島台茶碗 亭主の点前 炉
2015年2月8日  「会記  茶会記


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2016年12月6日火曜日

置き道庫 広間 炉 濃茶

家元の祖堂は、道安囲いになっており、点前座の勝手側(左側)には引き戸が付いて、道庫が仕組まれている。
この道庫には底が付いておらず、持ち運びが出来るようになっている。

このような道庫を広間に置いて、棚物として使う特殊なやり方がある。
台目棚と同じ様に、広間で小間の台目切りの稽古をする為に、道庫を棚として使っていると思われる。

水指、茶入、茶碗の置き様は、小間本勝手台目点と同じにする。 (台目棚の時と同じ)

水指は、道庫の中、右半分の中央、奥行きの真中。
茶入は、道庫の手前、左右中央。
茶入と茶碗は、道庫の手前、左右中央に置き合せる。

水指は、運び。

身体は外隅中心に座る。

茶入の仕服は、緒つがりを持ち、左手で道庫の竹釘に、緒の輪の方を掛ける。
仕服の口は、道庫の奥の方を向く。

茶入と茶筅も、道庫の手前、左右中央に置き合せる。

居前から水指の蓋を取る時は、右手→左手→右手、
蓋をする時は、そのうち返し。

御三器拝見の時、
茶入を取る時、身体は棚正面に向く。
茶杓を取る時、身体は居前に向いて取る。 女子は棚正面に向いて、茶杓を取る。
仕服は、居前から左手で取る。 女子も同じで居前から左手でとる。

柄杓と蓋置を飾る時は、棚正面に向き、建水の上から左手で柄杓を取り、右手で道庫の右側に打ってある竹の柄杓釘に掛ける。

柄杓は、湯返しをしない。

次に、蓋置を左手で取り、右手で柄杓の柄の下辺りに置く。



下記も参照
2021年6月19日 「竹の蓋置
2016年12月1日 「柄杓湯返し 竹蓋置 広間
2016年3月5日 「抱清棚
2014年11月3日 「仕服の紐 緒縒



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2016年12月1日木曜日

柄杓湯返し 竹蓋置 広間

柄杓の湯返し

棚として作ってある物(棚)に、柄杓を飾り残す時には、基本的に湯返しをする。
塗りの棚でも木地の棚でも、湯返しをする。
桐木地の丸卓、木地の旅箪笥も同様で、湯返しをする。
棚ではないが、風炉の大板の場合も、湯返しをする。
蓋置も焼物の蓋置を使う。

水に濡れる物として作ってあるものに、柄杓を置き(飾り)残す場合は、湯返しをしない。
平水指の蓋、水ガメの蓋、大口の蓋など。
但し、ツマミが付いている蓋には、柄杓蓋置は置き残さない。
ツマミが邪魔になるからである。

柄杓を飾り残す場合には、蓋置も一緒に飾り残す。
その場合の蓋置は、竹を使わない。 焼物などを使う。

大瓶水指、大口水指
 柄杓は、湯返しをしない。
 普通、蓋置は焼物を使う。
 竹の蓋置を使う時には、柄杓蓋置共に置き残さない。

平水指
 柄杓は、湯返しをしない。
 蓋置は、普通、焼物を使い、置き残す。 竹の場合には、柄杓も共に持って帰る。



抱清棚 (水指は運び)
 柄杓は、湯返しをしない。
 蓋置は、竹を使う。


抱清棚のように、柄杓釘がある棚では、柄杓の湯返しはしない。

抱清棚や台目棚、置き道庫などの小間の雰囲気を広間で味わおうとして工夫されている棚では、
竹の蓋置を使うが、小間と同じように柄杓蓋置を飾り残す。
柄杓の湯返しはしない。小間の場合と同じ様に扱う。

抱清棚では、中の棚板を引き出して、旅ダンスと同じく芝点の扱いも出来る。


風炉 大板 (水指は運び)
 柄杓は、湯返しをする。
 蓋置は、普通、焼物を使い、飾り残す。 竹の場合には、柄杓も共に持って帰る。 



なお、
風炉 中置の場合も水指は運び出すが、敷板は小板であるので、
柄杓・蓋置を飾り残すことはない。
よって、柄杓は、湯返しをしない。 又、蓋置は竹を使う。


竹台子 風炉一つ置き (水指は運び)
 普通、蓋置は焼物を使い、柄杓も飾り残す。柄杓は湯返しをする。
 竹の蓋置の場合には、柄杓は湯返しをせず、柄杓蓋置共に持って帰る。



大棚、長板 二つ飾 ・・・ 「風炉釜」 「水指」を飾る。
 天板の中央に茶器を飾る。
 竹の蓋置を使う。
 柄杓・蓋置は、台子・長板の左端前の畳の上に蓋置を置き、柄杓を引く。
 柄杓・蓋置は、台子・長板には飾り残さず、水屋に持ち帰る。
 薄茶点前に限る。


下記も参照
2021年6月19日 「竹の蓋置
2016年5月11日 「風炉 大棚、長板
2015年5月27日 「竹蓋置
2014年10月21日 「柄杓と蓋置 扱い
2015年2月17日 「青竹の蓋置、灰吹き 茶事
2015年2月17日 「黒文字 青竹 保存方法
2015年10月6日 「柄杓・蓋置 飾り残し
2016年1月11日 「柄杓を構える 左手 握り方
2016年4月6日 「大水指 大壷水指 炉
2016年4月7日 「大水指 大口 炉
2016年8月16日 「平水指 割蓋
2016年3月5日 「抱清棚
2014年11月23日 「竹台子 一つ飾り

2016-12-25 修正
2018-12-16 追加


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2016年11月18日金曜日

旧暦 秋 菊

旧暦の秋は、
旧暦 7月(文月、初秋)、8月(葉月、仲秋)、9月(長月、晩秋)の3ヶ月。

新暦では、8月頃~10月頃となる。

平成28年では、
旧暦7月1日は、新暦 8月3日。
旧暦9月30日は、新暦 10月30日だったので、
旧暦の秋は、新暦8月3日~新暦10月30日となっていた。

大雑把に言えば、旧暦秋から冬に変わった所で、お茶では風炉から炉に替る。

秋になると菊が盛りになって来るが、
基本的には、菊は風炉の花である。

しかし、菊を炉では使ってはならないと言う事ではない。

私も炉でも菊を使うこともある。

特に、寒菊の照葉になったものは、炉でもそれなりの風情がある。

なお、利休は菊を好まなかったと言われている。
菊は非常に花の持ちが良く、何日も使えるからだろう。
「この花は貴方の為に今切って来ました」とはならないからだろう。



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2016年11月17日木曜日

京 名水

京の三名水として、言われているのは、

1.染井 そめい ・・ 京都御所東側 梨木神社にある。今も枯れずに湧き出ている。

2.醒ヶ井(左女牛井) さめがい ・・ 下京区堀川通五条下る西側に跡あり。

3.縣井 あがたい ・・ 京都御所の西北に跡あり。


利休の頃、名水と言われていたのは、

(1)醒ヶ井(左女牛井) ・・ 村田珠光が傍らに住んだとの伝説あり。
             利休が好んだとの伝えあり。
             織田有楽が修復した。

(2)柳の水(柳井) ・・ 中京区西洞院通三条下る。
           織田信雄(信長の次男)の邸址との説あり。
           利休が汲んだとの伝えあり。

(3)三の間 ・・ 宇治橋の西詰から三ツ目の柱の間に南側(上流側)に張り出した欄干の下から
       汲み上げた川水。
       秀吉も好んだとの伝えあり。



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2016年10月20日木曜日

掛物 掛軸 風帯 掛緒 巻緒

掛物 ・・ 掛軸とも言う。

掛物の表具(軸表装)には、色々あるようだが、
よく目にするのは、図の様な表具が多い。


本紙
一文字
中回し(ちゅうまわし) ・・ 中縁(ちゅうべり)とも言う
上(じょう)下(げ) ・・ 天地(てんち)とも言う
風帯(ふうたい)、露(つゆ)
表木(ひょうぼく)
掛緒(かけお)、巻緒(まきお)
軸先(じくさき)、軸木(じくぎ)

等々から出来ている。
名称は、様々に言われていて、一定していない。

「風帯」には、普通、「一文字」と同じ裂を使う。
時には、「中回し」と同じ裂を使ってあるものもある。

「露」は、「風帯」の下端の左右に付いている綿の糸。
「露」を摘まんで「風帯」を扱う。
普通「露」は白色だが、色が付いている「露」もあり、「花」と言うらしい。
中でも薄い黄色の「露」は、「水」と言うらしい。

「風帯」には、普通折り目が付いているが、折り目を直そうと思って押さえ過ぎないように注意する。
折り目は付いていて宜しい。
貴方の為に箱から出してきたばかりですと言っている様に見える。

「掛緒」を「掛物釘」に掛けて、掛物を掛ける。
「掛物釘」は、表千家では竹を使う。

掛物を掛けている時には、「巻緒」は「掛緒」の端まで移動させる。
床の勝手付きの方の「掛緒」の端に持ってくる。

掛物を巻きあげた時に、一番外の「表木」の横に「外題」(げだい)が貼ってある物もある。
軸の内容を記してある紙である。

習事にある「軸飾り」は、「外題」を客に見せる為に、巻いたままの軸を床に飾った「外題飾り」から始まっている。
室町時代に、能阿弥などの同朋衆が軸の内容を極めて、外題にそれを記したことによる。


下記も参照
2015年11月3日 「掛物と後ろの壁
2015年9月23日 「床の掛物と花入


2016-10-25 修正


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2016年9月20日火曜日

茶事 懐石 元伯宗旦 覚々斎

三代 元伯宗旦は、懐石について、時期の物を新しく調理して出しなさいと言っている。

次の様に言っている

時ならぬ肴 出し候事あしき也
或は 口切に青豆 はじかみ 鮎のうるかなど 夏の季の物を出すこと わるし
また 風炉の時 冬の季のもの出すべからず
総じて茶の湯料理とは 当座のものを 当座当座あたらしく調理するを専らとす
勝れて珍しきものは 悪し
初物は出してもよし


はじかみ ・・ 生姜、山椒の古い呼び名


六代 覚々斎には次の有名な文がある。

料理 賞められ 無念に候
料理人にては これなく候
その茶 面白からざる故 料理ほめ申候事也 (ほめ もうし そうろう ことなり)




2014年11月9日 「茶事 懐石の材料 三代宗旦」に追加して修正。



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匁 斤 重さ

「匁(もんめ)」:  重さの単位、明治以降 1匁=3.75g。

五円硬貨は3.75gで、ちょうど1匁に相当する。

江戸時代には、時期によって変動するが、1匁=3.75g弱 で推移している。

お茶も、1匁=3.75g
お茶の1斤(きん)=200匁=750g

極(濃茶)には、 20匁(75g)、10匁(37.5g)、5匁(18.75g)入り袋がある。

茶師が入日記に、詰めたお茶の一覧、年月日、茶師名を記し、茶壺の箱の蓋裏に貼り付ける。

現在の日本の法定単位では、「匁」は真珠の計量にのみ使われている。

明治の度量衡法では、
1匁(もんめ)=3.75g
1斤(きん)=160匁=600g
1貫(かん)=1,000匁=3.75kg

明治24年制定の度量衡法により、上記の単位になっていたが、
尺貫法の廃止に伴い昭和34年以降法定単位ではなくなった。

日本では「斤」の呼称が商品の建値にも使われて、さまざまの大きさの斤が発生した。

例えば、
薬屋が使った大和目(やまとめ)は180匁、
山椒(さんしょう)用は60匁、
お茶用は200匁、
紅花(べにばな)用は100匁、
実つき木綿用は600匁が それぞれ1斤である。

舶来品(パンも含む)に対しては、1ポンドに値が近い120匁(450g)を1斤とし、これを英斤(えいきん)と呼んだ。

現在の日本の法定単位では、「斤」は食パンの計量にのみ使われている。
これはパンが英斤を単位として売買された歴史に由来する。

但し、1斤として売られるパンの重さは時代とともに少なくなっている。
現在、公正競争規約は、食パンの1斤=340g以上と定めている。

なお、重さではなく長さの単位である「間」も測る対象によって寸法が異なる。
2019年2月14日 「長さ 寸法 間 尺」を参照。

2016年9月19日 「茶壺 口切り」 を参照。
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2016年9月19日月曜日

茶壺 口切り

立春から88日目の八十八夜頃(5月2日頃)に摘んだお茶の葉を、
直ぐに蒸して発酵を止め、さらに葉脈の様な不純物を取り除いて、
揉まずに精製したお茶の葉を「碾茶(てんちゃ)」と言う。
抹茶は、濃茶も薄茶も、碾茶を茶臼でひいて粉にしたもの。

昔は、碾茶を詰め、木で作った口蓋をし、更にその上から和紙で封をした状態で、茶師から戻って来た茶壺を、風通しの良い冷暗所で一夏熟成させた。
吐く息が白くなる頃、柚子の実が黄色くなる頃、風炉から炉に替えて、その年の新茶(碾茶)を茶臼でひいて口切りをする事になっていた。

濃茶は「極(ごく)」と呼ばれ、茶銘別に和紙の袋に詰められて、茶壺に入れられる。
更に、その周りを薄茶の茶葉(碾茶)で埋める。
その上で、茶壺に蓋をし、更に和紙で封をする。

この茶壺の口封を切って、その年の初夏に摘んだお茶を初めて使い始める事を、「口切り」と言う。

「極」は、二十匁(75g)ないし十匁(37.5g)、五匁(18.75g)を和紙の袋に詰める。

茶壺を納めた箱の蓋の裏に、「入日記(いりにっき)」と言われる紙に、詰められたお茶の一覧、年月日、茶師名を記入し、貼り付けてある。
この入日記は、毎年前年の入日記の上に張り付けて行く。
例えば、30年にわたって同じ茶壺にお茶を詰めさせていれば、30枚の入日記が箱の蓋裏に貼ってあり、過去30年の詰めたお茶の歴史を見る事が出来る。

現在では、茶壺は儀式用(口切り用)としてだけ残っている。

私は茶壺にお茶を詰めて貰って、口切りの茶事をした事はないが、毎年茶壺の口切りをして茶事をされる方もおられる。
その様な方の口切りの茶事に呼ばれて多く貼られた入日記を拝見すると、その方の茶人としての歴史を感じて壮観である。

現在は、一年中何時でも粉に挽いてある抹茶を自由に手に入れられる様になっているので、
「名残り」「口切り」と言っても実感の伴わないものになってしまっている。
風炉の時期にはお茶の勢いも弱っているから釜に水を加えると言う濃茶の点前も、空しい形ばかりのものになっている。

「匁」は、重さの単位。
明治以後、1匁=3.75g。
五円硬貨は3.75gで、ちょうど1匁に相当する。
江戸時代は、時期によって変動するが、平均して 1匁=3.75g弱である。

茶壺


茶壺の口から見た「極」の袋、周りの茶葉(碾茶)は薄茶。



茶壺の中身
濃茶の袋。ザルの中は周りに詰めてある碾茶の薄茶。



入日記


下記も参照。
2015年5月9日 「薄茶の点て方 お茶の量 お湯の量
2016年9月20日 「匁 斤 重さ


2016-09-22 修正


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2016年9月6日火曜日

三重棚と二重棚

三重棚(さんじゅうだな)

一閑    久田宗全 好み   (千家五代 随流斎の兄)
桐木地  千家六代 覚々斎 好み (久田宗全の子)
桑木地  千家七代 如心斎 好み (覚々斎の子)

三重棚は久田宗全が初めて好んだが、その後父子三代にわたって三重棚を好まれている。

三重棚は、普通炉の時期だけに使う。

三重棚の天板は、ない物として扱う。


二重棚(にじゅうだな)

三重棚を基に、千家十代 吸江斎が溜塗二重棚を初めて好んだ。

吸江斎好みの二重棚には、地板がないが、地板のある二重棚も、明治以後宗匠方によって、好まれている。

溜塗    十代 吸江斎 好み     地板なし
糸巻    十一代 碌々斎 好み   地板なし
桐木地  十二代 惺斎 好み     地板なし
桑木地  十二代 惺斎 好み     地板なし
飛騨春慶糸巻 十二代 惺斎 好み  地板あり
杉木地糸巻 十二代 惺斎 好み   地板あり
糸巻透かし 十二代 惺斎 好み    地板あり

二重棚は、炉風炉共に使う。

地板がない二重棚では、水指は運び。
柄杓・蓋置を飾り残すので、蓋置は竹でなく焼物等を使う。
柄杓・蓋置は、天板に「入り飾り」又は天板右端に「リ飾り」で飾り残す。
下の棚には、薄茶器。


三重棚


吸江斎好み 溜塗二重棚


惺斎好み 杉木地糸巻二重棚


十代 吸江斎


2016-09-07 修正


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2016年8月16日火曜日

平水指 割蓋

平水指 割蓋

啐啄斎好み「立浪蒔絵 割蓋 朝鮮平水指」、
即中斎好み「芦水蒔絵 割蓋 万古青磁平水指」 などがある。

風炉敷板より畳目1目奥に水指を据える。

運びの道具立てではあるが、蓋置は竹に限ることはない。
柄杓・蓋置を置き残す時は、焼物などの蓋置にする。
焼物であれば少々侘びた物が良い。

柄杓・蓋置を水指の蓋に置き残す時は、湯返しをしない。
入り飾りの様にして残す。

割蓋ではないが、平水指の一枚蓋の場合は、蓋のツマミが邪魔になるので、
柄杓・蓋置は、置き残さない。

2016年4月6日「大水指 大壷水指 炉」 を参照。


濃茶では、

仕服は、風炉と水指の間の奥の方に寄せて置く。

茶巾は、割蓋の開ける方(左側)の手前に置く。

薄茶では、

中仕舞いはしない。
棚の場合と同じく、点前の終わりには水指前に茶器・茶碗を置き合せる。

2014年11月13日「中仕舞 炉 濃茶 風炉 薄茶 広間
2014年11月13日「本仕舞 点前の終わり
を参照。


尚、平水指でなく、普通の水指に割蓋の時には、

合せ目は、平水指と同じ様に縦にして置き、釜に近い方の蓋を開ける。
広間であれば、
風炉では、左側の蓋を開け、炉では右側の蓋を開ける事になる。

蓋の開け方は、平水指の場合と同じ手の使い方で開ける。
左側の蓋を開ける時は、右手で右の蓋を押え、左手で開け始め、手を替え右手で開けきる。
右側の蓋を開ける時は、左手で左の蓋を押え、右手で開け始め、手を替え左手で開けきる。
開けている手の反対の手で、蓋が動かない様に押えて置くのは同様。

濃茶では、開ける方の蓋の上に茶巾を載せる。




啐啄斎好み「立浪蒔絵 割蓋 朝鮮平水指」




2016-9-29 修正
2018-12-16 追加


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2016年8月14日日曜日

棗 濃茶入としての扱い

棗は、蒔絵等していない、真塗又は黒の棗を使う。

棗に入れる濃茶の量

大棗 ・・ 人数分計り切り
中棗 ・・ 常の茶入と同じ
小棗 ・・ 人数分計り切り、又は 常の茶入と同じ

仕服の部分名称は、2014年11月3日「仕服の紐 緒縒」を参照。

小棗・中棗の扱い (仕服をぬがせる)

膝前に小棗(中棗)を取って、「緒(お)」の結び目を一つほどき、左掌に載せ、
右手で残りの結び目の「緒」を引いてほどき、
緒の「打止め」を右手の親指・人差し指でにぎり、
同じ右手の中指・薬指で仕服を押えながら、「緒」を引き出す。

右側の打止めの方の「縒(つがり)」の端の部分を、右手の人差し指・中指で押えておいて、
同じ右手の親指と薬指で「つがり」を広げながら、「緒」をゆるめる。

次に、左側も同じ様にして、

仕服の口の部分を右、左とくつろげて、
右手で棗を膝前に取る。

左掌にある仕服は、常のとおりに扱って処置する。

棗は、常の様に帛紗で清める。
四方さばきをして、蓋の上を「こ」の字に拭き、甲拭きもする。

女子は、小棗・中棗も常の茶入と同じ様に扱って仕服を脱がせ、四方さばきした帛紗で清める。甲拭きはしない。

小棗の場合、
膝前で「緒」の結び目をほどかず、全て左掌の上で行っても良い。

大棗の扱い (仕服をぬがせる)
常の茶入と同じ扱い。

小棗・中棗の扱い (濃茶を掃く)

薄茶の時と同じく、茶杓を握り込んだ右手で、蓋を取り、茶碗の横に蓋を置いて、
濃茶を茶碗に掃き、掃き終わったら、
茶杓を茶碗で一つ打って、お茶を払い、
右手に茶杓を握り込んで、蓋をして、棗を茶筅の横に戻す。

右手の茶杓でお茶をさばき、茶碗で二つ打って、お茶を払い、
茶杓を棗の上に戻す。

濃茶を人数分計り切りに入れている場合は、
先ず、1人分位を茶杓で茶碗に掃き、
その後、お茶を茶杓で掻き出して、茶碗に入れる。

茶杓で細かく掻き出して、お茶が棗に残らない様にする必要はない。
大きく掻き出して、少し棗に残っても良い。

女子は、小棗・中棗も常の茶入と同じく、茶杓を茶碗に預ける等同じ扱いをする。.

大棗の扱い (濃茶を掃く)
常の茶入と同じ扱い。


2015年12月13日「包み帛紗 濃茶 棗」も参照。



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2016年8月9日火曜日

四滴茶入

四滴茶入 ・・ 「水滴」、「油滴」、「手瓶(てがめ)」、「つる付」


昔は、4種共濃茶に用いていたそうだ。
現在では、薄茶の道具になり、「水滴」だけ濃茶にも用いる。

私は、唐物の「油滴」の茶入を見た事がある。その時は濃茶入として使われた。

「手瓶」は、手の反対側に「口」があるつもりで扱う。


棚に飾る時  (濃茶にて水指前に飾る時も)、

「水滴」「油滴」「手瓶」は、「口」を釜付きに向ける。
「つる付」は、「つる」を横にする。

茶碗 又は茶筅と置き合せる時、

「水滴」「油滴」「手瓶」は、「口」を茶碗(又は茶筅)に向ける。
「つる付」は、「つる」を縦にする。

蓋を拭く時、

「水滴」「油滴」「手瓶」は、置き合せた「口」の向きのまま、左手で取り上げ、「こ」の字(又は「ニ」の字)に拭く。
「つる付」も、「つる」を縦にしたまま、「つる」の下から「こ」の字(又は「ニ」の字)に拭く。

濃茶の時、

胴拭きはしない。

蓋に茶杓を乗せる時、

茶杓は蓋の釜付きにのせる。

お茶を茶碗に掃く時、

「水滴」「油滴」「手瓶」は、蓋を右手で取り、右手で「口」を手前に廻し、お茶を掃く。
お茶をはき終わったら、「口」を右手で元に戻して、右手で蓋をする。
「つる付」は、「つる」を縦にしたまま蓋を取り、お茶を掃く。

「水滴」もそれ以外もすべて、蓋は茶碗の右に置く。
茶碗と膝との間には置かない。

普通の茶入の様に、左手で胴を持って、お茶を掃く。
又は、平棗の様に扱って、左手の平の上にのせて、お茶を掃く、
の二通りある。

四滴茶入が平茶入の時は、
平棗と同じく、左手に受けて拭き、お茶を掃く時も左手に受けて掃く。

拝見に出す時、

「水滴」「油滴」「手瓶」は、「口」を茶杓に向ける。
「つる付」は、「つる」を縦にして置く。

客が拝見する時、

「水滴」「油滴」「手瓶」は、「口」を茶杓に向ける。
拝見に廻す時は、「口」を進む方向に向ける。
「つる付」は、「つる」を縦にする。

口を廻す時は、常に口が手前の方を通る様に廻す。


2014年10月17日 「耳付き茶入 濃茶 お茶をはく」 を参照。

2017-1-17 修正



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2016年7月6日水曜日

後炭 釜に水 茶事

後炭 釜に水を足す 茶事

稽古は別として、

茶事では、濃茶にゆっくり時間をかけて、一座楽しんで過ごすと、
どうしても火相が多少衰えて、薄茶の前に炭を次ぐ必要が出てくると思われる。

これを後炭と言う。

薄茶を差し上げるに十分のお湯が残っておれば、水を差さなくても宜しいが、
必要であれば釜に水を足す。

この釜に足す水は、必要最小限の量にしておく。

多量の水を足してしまうと、湯相が整うのに時間がかかる為、
薄茶を差し上げるのが遅くなり、茶事の時間が長くなり過ぎるからである。

参照
2018年4月21日 「後炭 準備 茶事
2015年12月17日 「釜に水を足す 炉・風炉」 
2014年10月16日 「風炉 土風炉 炭点前 終り



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2016年6月27日月曜日

稽古 お辞儀 総礼 茶事

稽古の始まりと終わりには、亭主・客共に一緒にお辞儀をする。 総礼とも言う。
これは稽古のものである。

稽古の時、例えば、
薄茶点前の始まりに、亭主は茶碗を膝前に置き、茶道口の襖を開けて、お辞儀をする。
同時に客もお辞儀をする。 ここから薄茶点前の稽古が始まる。

薄茶点前の終わりには、亭主は水次ぎ薬缶を膝前に置いて、茶道口の外でお辞儀をし、
客もまたお辞儀をして、亭主が襖を閉めた所で、薄茶点前の稽古が終わる。

しかし、これは稽古だからやっている事である。

実際の茶事ではしない事である。

茶事の初座では、客が入室した後、亭主は茶道口を開けてお辞儀をする。
正客から席に入る様に勧められて、亭主は席中に進み、
改めて正客にお辞儀をして挨拶をする。
その後、亭主は連客にも挨拶して、茶事が進行して行くことになる。

初座の炭点前を始める時に、
茶道口で炭斗を前にして、亭主がお辞儀をする事はない。
後座でも、濃茶を始める時に、
茶道口を開けて茶碗を膝前に置いて、亭主がお辞儀をすることもない。

初炭の場合、
炭を直す旨を正客に申して、水屋に戻り(茶道口は開けたまま)、
炭斗を持ち出して(炉の場合は、灰器も)茶室に入る。
茶道口前で座ることなく、立ったまま入る。
茶道口を閉め、炭を始める。

後座、濃茶の場合、
客が後座入りをした後、
茶碗を膝前に置き、茶道口を開けて、そのまま立って茶室に入り、
いつもの通りに濃茶を始める。

初座の始まりでお辞儀をして挨拶をしているので、個々の点前の始まりと終わりで挨拶などはしないものである。

稽古は稽古であって、実際の茶事とは少し違う事を理解して置く必要がある。

大寄せ茶会の場合は、点前毎にお客が入れ替わるので、席主の考え方で好きにすればよい。


下記も参照
2018年3月16日 「稽古 お辞儀 総礼 茶事(2)
2015年03月14日 「お辞儀 一礼
2014年10月21日 「稽古 煙草盆と菓子器の運び出し お辞儀


2018-4-22 修正


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2016年6月2日木曜日

桑小卓 柄杓・蓋置 建水・蓋置

桑小卓 柄杓・蓋置飾る

点前の終わりの柄杓と蓋置の飾り方には二通りある。

(1)天板に斜めに飾る、入り飾り。

蓋置は合の真下、柄の節にかかる辺りに置く。

(2)左側の奥の柱に柄杓の合をもたせかけ、柄の先は左側の手前の柱の根元に置く。

水指の蓋をしたら、すぐに柄杓・蓋置を飾る。

柄杓の合は手前を向かせ、斜めに柱に立てかける事になる。
右手で柄杓の節の少し上を持ち、左手は柄の先に添えて、立てかける。

蓋置は、中棚の左側手前、柄杓の柄の先の右横に取り敢えず仮置きして、
水指前に並べてある茶碗・茶器(薄茶の場合)の内、茶碗を勝手付きに仮置きし、茶器を天板に戻す。

棚前が空いたところで、
仮置きの蓋置を右斜め上から握り、左手であしらって、地板に置き易い様に、横から握り直して、地板の左右中央の少し奥に置く。

薄茶でも拝見がある場合は、濃茶の場合に準じる。

濃茶の場合、
水指の蓋をした所で、正客から拝見の挨拶。
それを受けて、すぐに柄杓・蓋置を飾る。

蓋置は、中棚に取り敢えず仮置きして、
水指前に並べてある茶碗を、勝手付きに仮置きし、茶入他を拝見に出す。

建水を勝手に引く前に、
仮置きの蓋置を右手で取り、地板の左右中央の少し奥に置く。

建水も飾る場合、

水指に水を加えた後、
洗った建水を持ち出し道具畳の左右中央に座り、

建水を左膝の線から少し前に出して、左手で置き、地板の蓋置を建水に右手で入れ、
建水の左右の真中を両手で持って、地板に入れる。
両手が棚に触る位入れたら、
右手、左手と建水の手前に持ち直して、建水の手前が地板から少し出る位まで、両手で奥に入れる。

又は、
拝見物がある場合、
拝見物を取りに来る時、建水を持って出て、建水を棚の地板に入れてから、拝見物の前に移り、お尋ねに答える。

建水を必ず飾る必要はありません。
お客に特に見て頂きたい建水でない場合でしたら、建水は飾らない方がむしろ宜しいでしょう。

建水も飾っている時の点前の始まりは、

茶碗を持ち出し、左手で勝手付きに仮置き。
建水を飾った時の打ち返しで、建水を棚から引き出して、
左手で左膝横の膝から少し下がった定所に置く。
茶器を天板から下して水指前右寄りに置き、仮置きした茶碗を右手で取り、水指前に置き合せる。
右手で建水の中の蓋置を取って、左手であしらい、右手で定所に置く。
柄杓を取って、蓋置に引く。
「どうぞお楽に」の挨拶。
建水を進めて、後はいつもの通り。

蓋置だけ地板に飾っている時の点前の始まりは、

茶碗を持ち出し、左手で勝手付きに仮置き。
地板に置いている蓋置を、中棚の左側手前、柄杓の柄の先の右横に取り敢えず仮置きして、
茶器を天板から下して水指前右寄りに置き、仮置きした茶碗を左手で取り、水指前に置き合せる。
建水を勝手から持って出て、いつもの様に身体の横に置く。
蓋置を取って定所に置き、柄杓を取って、蓋置に引く。
「どうぞお楽に」の挨拶。
建水を進めて、後はいつもの通り。

なお蛇足になるが、柄杓蓋置を飾った状態からは濃茶点前を始めないので、上記の「点前の始まり」は薄茶の場合です。
(組合点、仕組点を除く)

参照
2015年6月5日 「桑小卓 風炉 平建水」 
2021年5月2日「七種蓋置


2016-08-17 修正

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2016年5月17日火曜日

組合点 習事

組合点

組合点は、建水に由緒がある場合に、それをあらかじめ点前座に飾って濃茶を点てる点前。

拝領物、名物等の建水を重んじて扱う時に行われる。

千家四代 江岑が紀州徳川家初代頼宣 南龍公より南蛮瓶蓋(なんばんかめぶた)の建水を拝領して、その建水を点前座に飾ったのが、「組合点」の始まり。

建水を重んじる点前であるので、木地曲げの建水を使うことはない。

建水は点前座に飾るものではないので、
あらかじめ建水を点前座に飾る為には、
通常建水より前に運び出す(もしくは飾っておく)道具を全て前もって飾っておく。

よって組合点では、建水以外に、
茶入、茶碗、水指、茶杓、茶筅・茶巾、柄杓・蓋置も飾っておく。

亭主は、出帛紗のみを懐中して席に入る事になる。

通常、広間の場合、棚を用いて、柄杓・蓋置は棚に飾る。

小間の場合に、
釣り棚(隅棚)、柄杓釘、道庫がある場合には、それに柄杓・蓋置を飾る。
無い場合には、膝前少し先の勝手付きに蓋置を置き、それに柄杓を縦に引いておく。

炉の場合、
組合点では膝前に少し余裕を持って座るが、
それでも建水が大きくて、膝前に置くには余裕がない時には、
膝前少し左に、建水(茶碗・茶入も入れたまま)を置き、茶碗・茶入を膝前に取る。

七代 如心斎(1700年前半の家元)の頃までは「組合手前」、
八代 啐啄斎(1700年後半の家元)頃から「組合点」と言ったらしい。


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2016年5月11日水曜日

風炉 大棚、長板

風炉に使う大棚は、風炉・釜をのせる事が出来る台子、及び長板になる。

大小ある場合は、風炉をのせる必要があるから大は風炉用、小は炉用になる。
竹台子などの様に、炉風炉両用もある。

風炉の大棚・長板での飾り様は、

諸飾 ・・・ 「風炉釜」 「水指」 「柄杓立・火箸・柄杓」 「建水・蓋置」を飾る。 
   天板の中央に、初座では茶入、後座では茶入を畳に下ろし、茶器を飾る。

二つ飾 ・・・ 「風炉釜」 「水指」を飾る。
   天板の中央に茶器を飾る。
   柄杓・蓋置は、台子・長板の左端前の畳の上に蓋置を置き、柄杓を引く。
   柄杓・蓋置は、台子・長板には飾り残さず、水屋に持ち帰る。竹の蓋置を使う。
   薄茶点前に限る事が多い。

2015年5月27日 「竹蓋置」 を参照。

一つ飾 ・・・ 「風炉釜」を飾る。
   天板の客付き三分の一に、初座では茶入、後座では茶器を飾る。
   水指は、棚の左端前に、細水指を居前に向かって斜めに飾る。
   柄杓・蓋置は、風炉前の板の上に蓋置を置き、柄杓を引く。
   柄杓蓋置は、台子・長板の風炉の左に柄杓を縦に飾り、蓋置をその右に飾る。
   蓋置は、竹でなく、焼物などを使う。
   中仕舞にはしない。


なお、炉の大棚・長板での飾り様は、

「水指」 「柄杓立・火箸・柄杓」 「建水・蓋置」を飾る。
天板の中央に、初座では茶入、後座では茶入を畳に下ろし、茶器を飾る。

次も参照されたい。

2016年12月1日 「柄杓湯返し 竹蓋置 広間
2016年1月30日 「長板 色々
2014年11月23日 「竹台子 一つ飾り


2016-09-01 再修正

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風炉 炭点前 炭斗動かす 羽箒

風炉 炭斗を動かす

持ち出して置き付けた位置から炭斗を動かすのは、

「棚なし」の炭点前

風炉の右の空き中央に炭斗を置き、その位置のまま羽箒・火箸、香合を下ろす。
炭斗と風炉の間に羽箒・火箸を置く空きがあるから、炭斗を動かさない。

風炉を掃いた羽箒は、炭斗と釜の間に斜めに置く。

下火を直した火箸を左手に持たせ、右手で炭斗の左縁を持って、畳の上を引きずりながら、
炭斗を左に寄せる。

女子は、火箸を炭斗の胴炭の左横に入れ、両手で炭斗を左に寄せる。

胴炭から始め、炭をつぎ終わったら、火箸を炭斗中央に入れ、両手で炭斗を元の場所に戻す。

「大板」 ・・・棚なしの炭点前とほぼ同じ。

風炉の右横の空き中央に炭斗を置き、その位置のまま羽箒・火箸、香合を下ろす。
炭斗が大きくて下しにくい場合は、炭斗を右に動かしてもよい。

「小棚」

炭斗を持ち出し、棚前に置き、身体を風炉正面に移してから、両手で炭斗を少し右横に動かす。
膝の右横を空けて羽箒・火箸を置き易くする為である。

風炉を掃いた羽箒は、炭斗と釜の間に斜めに置く。

下火を直した火箸を左手に持たせ、右手で炭斗の左縁を持って、畳の上を引きずりながら、
炭斗を左に寄せる。

女子は、火箸を炭斗の胴炭の左横に入れ、両手で炭斗を左に寄せる。

胴炭から始め、炭をつぎ終わったら、火箸を炭斗中央に入れ、
両手で炭斗を右に寄せた位置まで戻して、
羽箒で掃いた後、香をたく。

釜を風炉に掛けたら、釜敷・鐶、羽箒を炭斗に戻し、炭斗を初めの運び出した位置に戻す。

「中置」 ・・・小棚の炭点前とほぼ同じ。

炭斗は、風炉の小板(敷瓦)より手前の右寄りに置く。

身体を風炉正面に移したら、直ぐに両手で炭斗を右に動かす。
羽箒、香合は炭斗から下すが、火箸は下ろさない。
中置の為、身体は畳の左右中央に座っているので、膝と炭斗の間の空きが少ないからである。

「大棚」 ・・・小棚の炭点前とほぼ同じ。

炭斗を持ち出し、水指前に置き、身体を風炉正面に移してから、両手で炭斗を少し右横に動かす。
羽箒・火箸、香合を炭斗から下す。
柄杓立がある場合は、柄杓立てから火箸を取り、羽箒の左横に並べて置く。

風炉を掃いた羽箒は、炭斗と釜の間に斜めに置く。

柄杓立がある場合、
釜を風炉に掛けたら、釜敷・鐶を炭斗に戻す。
羽箒を取って釜の蓋を掃き、炭斗の上に戻す。
炭斗の火箸を取って、炭斗の上で火箸の先を羽箒で払い、柄杓立に戻す。
炭斗を初めの運び出した位置に戻した後、身体を炭斗の前に移して、炭斗を持って水屋に下がる。

炭斗を運び出した位置に戻してから、火箸の先を羽箒で払う方法もある。
炭斗を初めの運び出した位置に戻した後、炭斗の火箸を取って、炭斗の上で火箸の先を羽箒で払い、柄杓立に戻す。
身体を炭斗の前に移して、炭斗を持って水屋に下がる。

火箸の払い方は、2016年1月11日「炉 長板 諸飾り 炭点前」を参照のこと。

「竹台子一ツ飾り」 ・・・中置の炭点前とほぼ同じ。

炭斗は、棚前右寄りに置く。

身体を風炉正面に移したら、直ぐに両手で炭斗を右に動かす。
羽箒、香合は炭斗から下すが、火箸は下ろさない。

羽箒は、炭斗と釜の間に斜めに置く。


2021-7-13 加筆


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炉 炭点前 炭斗動かす 羽箒

炉 炭斗を動かす

持ち出して置き付けた位置から炭斗を動かすのは、

炉に灰を撒いた後、羽箒で掃き、火箸を取って枝炭を灰器に置いたら、
その火箸を左手に持たせ、右手で胴炭を炉に入れた後、

左手の火箸はそのままにして、右手で炭斗を畳を引きずり、炉の傍に寄せる。

女子は、胴炭を入れた後、火箸を炭斗中央に戻し、両手で炭斗を炉の傍に寄せる。

炉を掃いた後の羽箒は、香合の右に斜めに置く。

但し、大棚の場合は、香合の右に羽箒を縦にして置く。

炭をつぎ終わったら、枝炭を炭斗に戻し、
火箸を炭斗中央に入れ、両手で炭斗を元の場所に戻す。


なお、次も参照されたい。

2014年11月13日 「羽箒 羽根 炭点前
2014年12月30日 「紙釜敷 炉 風炉
2015年1月7日 「炭台 炭点前 炉
2015年1月7日 「炭台 炭その他の配置
2016年1月11日 「大棚 初炭 羽箒・香合を飾る(飾らない)
2016年1月11日 「炉 長板 諸飾り 炭点前
2016年5月11日 「風炉 炭点前 炭斗動かす 羽箒


2017-12-18 参照項目を追加


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2016年4月12日火曜日

向切 炭斗に炭を組む 小間 炉

炉が向切の場合、炭斗は炉の左側に置く。
よって、炭斗の炭の組み方は、炉・風炉の右側に炭斗を置く広間の場合と逆になる。

胴炭を中心として、
炭斗の左側に、添炭・丸管・割管・枝炭・釜敷を入れる。
右側に、火箸・鐶(火箸に掛けて)・香合・羽箒を置く。

火箸・羽箒を下ろす位置は、炉の左横に羽箒、その左に火箸、その左に炭斗となる。
香合は、羽箒の先に置く。

灰器を仮置きする場所は、炭斗の更に左側(少し前)となる。
羽箒の仮置きは、灰器の前に斜めにして置く。

羽箒の羽根の狭い方が火箸を向く原則があるので、羽は所謂「風炉の羽根」を使う。

2014年11月13日「羽箒 羽根 炭点前」を参照のこと。

炭斗から羽箒・火箸・釜敷を取る(入れる)時は、左手を使う。
香合だけは、右手を使う。
香を焚く為に、香合を左手に載せている場合は、右手で火箸を取る(置く)。

写真の炭斗の火箸には鐶が掛かっていないが、これは自在で釜を吊っている為で、
五徳に釜を載せている場合には、火箸に鐶を掛けて持ち出す。





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2016年4月7日木曜日

大水指 大口 炉

大水指 大口

水屋の物であるが、炉の時季、置き水指として使う。
大壷水指と同じく、3月後半~4月初め頃、雪が解け水が温む頃に使う事が多い。

黒は利休形。
杉木地は、碌々斎好み。
溜塗 内 海松貝(ミルガイ)蒔絵は惺斎好み。

居前は、外隅になる。
居前のままで大水指の蓋を扱うので、扱い易い様に外隅中心に座っている。

炉縁の線の八寸(約24cm)先に、水指の口を客付にして置く。
蓋置は竹は使わない。 少し侘びた物が良いかもしれない。

茶器(茶入)、茶筅は、大水指と炉隅の間に流して置く。

大口の蓋を取る時

右手親指を上にして、蓋の手前正面を取り、少し浮かせて、
人差し指以下を蓋の奥まで掛けて、右手でしっかり持ち、
そのまま右の方にずらし、大水指の口の上と水指の上縁にかけて置く。

蓋をする時は、そのうち返し。

柄杓・蓋置を残す時は、入り飾りの様にして、置き残す。
柄杓の湯返しはしない。

稽古で、何人も大水指から水を汲んだ時、柄杓・蓋置を水屋に引いてから水を足す。
この時、点前帛紗を結び帛紗にして置き残してもよい。




2016年4月6日 「大水指 大壷水指 炉」 も参照。

2016-08-17 修正

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2016年4月6日水曜日

大水指 大壷水指 炉

春、水ぬるむ頃、大水指が使われることがある。

家元利休忌の松風楼では、大壷水指(大瓶水指とも言う)が使われる。

瀬戸染付の大壷で、十代 吸江斎が紀州徳川家治宝公より拝領、十一代 碌々斎がアメリカ産松の木の黒掻合せ塗の大板を敷板として好んでいる。

拝領の大水指なので家元では大板に載せて使われているが、そうでない大水指には大板は使わなくてもよい。

大瓶水指は、炉縁の線の八寸(約24cm)先に、盆蓋をかぶせて置く。
蓋には、蓋の立ち上がりを山並みにした山路盆もある。

居前は外隅中心。
居前のままで大水指の蓋を扱うので、扱い易い様に外隅中心に座っている。

蓋置は竹でなく、少し侘びた物を使う。
柄杓の湯返しはしない。

茶器(茶入)、茶筅は、大水指と炉隅の間に流して置く。

大瓶の蓋を取る時

右手親指を上にして、蓋の手前正面を取り、膝の上に持って来て、
左手親指を上にして、蓋の左横を持ち、左手で大瓶の左(勝手付き)に、
蓋の表を客付きにして立て掛ける。

蓋をする時は、そのうち返し。

柄杓・蓋置を残す時は、入り飾りの様にして、置き残す。

稽古で、大瓶の水が少なくなった時は、柄杓・蓋置を水屋に下げ、水次薬缶で水を次ぐ。
蓋の上に、結び帛紗を置き残してもよい。




2016年4月7日 「大水指 大口 炉」 も参照。


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2016年4月3日日曜日

美味しいお茶 茶の湯自慢

「江岑夏書」を四代 江岑が自筆で清書した「逢源斎書」が家元に伝わるが、
その中で、茶の湯が出来ると言うには長い年月がかかると言っている。

江岑が元伯宗旦から聞いた事と思われる。

「茶之湯は 二十年も致候ハては ならす候
極を 二三斤のミ候ハては ならぬと古より申候
今は 昨日今日の茶之湯いたし ちまんいたし候」

「茶の湯は 二十年も致し候はでは ならず候
極(良質のお茶)を 二三斤(一斤は約750g)飲み候はでは ならぬと古くより申し候
今は 昨日今日に茶の湯を始めたのに 自慢いたし候」

「茶の湯は、20年以上しなければならない」
「極(濃茶)を1,500g~2,250g飲まなければならない」
となると、
お茶の味が分かるレベル、上手に点てられるレベルに中々達しないのは当たり前の事と納得した。

濃茶1人前4g(~3.5g)として、375服~640服飲まねばならないが、
上手に点てた濃茶を月に3回(3服)飲んだとして、10年~18年かかるので、
上手に点てた濃茶を月に3回飲むのは大変な事であり、濃茶の味が分かる所に到達するのは至難の業と思える。

ある本には、茶事に月二回呼ばれたとして、極を二三斤飲むには20年かかると書いてあった。

また最近は、薄茶も もっと美味しく点てられるはずだと悩んでいる。

ある人は、

薄茶は、少し濃い目に、少量点てた方が良いと言っていた。
お客がもう一服欲しいと思う様に、点てなければならないと言っていた。

また、茶事に行っても美味しいお茶に当たる事は少ないとも言っていた。

これにも納得してしまった。
形や道具にばかりこだわっても、美味しいお茶を出さなければ茶事とは言えないと反省。



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初座後座 衣服替え 茶事

茶事に於いて、初座と後座に衣服を替える事がよく行われている。

四代 江岑の自筆書が家元に伝わっているが、その中に聞書として、次の様な記載がある。

「衣服替ル事 人によるへし わひならは其儘可然候」

「衣服を替える事 人によるべし 侘びならば そのままで然るべく候」

侘茶では、初座後座共に同じ衣服で良いと言っている。




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2016年3月5日土曜日

抱清棚

抱清棚 (ほうせいだな)

桐木地 吸江斎好み
杉木地 碌々斎好み

三井家のどなたかが入手した朝鮮唐津の水指の為に、小間の雰囲気を広間に取り入れられるように、吸江斎がこの棚を好まれたと聞いた事がある。

炉用と決まっている訳ではないが、風炉と並べると非常に窮屈になるので、炉用と言っても過言ではない。

水指は、運び。
湯返しは、しない。
蓋置は、竹を使う。

茶入の仕服は、緒の輪になっている方を竹釘(柄杓釘)に掛ける。
仕服の口は、棚の奥の方を向く。

柄杓は、合を竹釘に掛ける。
蓋置は、柄杓の柄の足元に置く。

「柄杓」と「仕服」を竹釘に掛ける(取る)時には、

居前から掛ける(取る)には、左手を使う。
柄杓の柄の節の少し上を、左手で竹の表皮の方から掴む。

棚正面で掛ける(取る)には、右手を使う。
柄杓の柄の節の少し上を、右手で竹の裏の方から掴む。

初炭の時、羽箒を竹釘に掛け、下に香合を置いても良い。


抱清棚 濃茶



抱清棚 薄茶





下記も参照
2016年12月1日「柄杓湯返し 竹蓋置 広間
2015年5月27日「竹蓋置
2020年12月9日「抱清棚 初炭 羽箒の扱い
2021年6月19日「竹の蓋置




2016-8-18 修正

2020-3-2  修正
2020-12-10 参照項目追加



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2016年3月3日木曜日

腰掛 円座 煙草盆 手あぶり 茶事

客は、寄付で白湯(さゆ)を頂いた後、半東の案内に従って腰掛に移る。

腰掛には、円座・煙草盆が用意されている。
寒い時期には手あぶりが出されている場合もある。

腰掛は、通常茶室に近い方が正客の座になっている。
正客が足を載せる石は、次客以下と異なっているので、直ぐに分かる。

円座・煙草盆・手あぶりは、詰の席(下座)に用意されている。
円座を重ねて、その上に煙草盆の正面を横にして置いてある。
正客の座が右側にある場合は、キセルの吸い口が右(壁側)になる様に煙草盆を置いてある。
正客が煙草盆を、正客と次客の間に、そのまま移動させれば良い様になっている。

手あぶりは、正客の座が右側にある場合は、煙草盆が載った円座の右側に置いてある。

手あぶりがない時、

正客は、先ず煙草盆を持って、正客と次客の間に、煙草盆の正面が自分の方を向くように、キセルの吸い口が右(壁側)になる様にして置く。
次に、一番上の円座を取って、自分の席に置いて、そのまま座る。
次客も、正客に続いて、上から円座を取って、自分の席に置いて座る。

手あぶりがある時、

正客は、先ず手あぶりを持って、正客と次客の間に置く。
次に煙草盆を持って、正客の席より上座に、煙草盆の正面が自分の方を向くように、キセルの吸い口が右になる様にして置く。手あぶりと煙草盆は正客の席の左右に分かれて置くことになる。
煙草盆の向きは、次客との間に置く時とは逆になる。

又は、手あぶりを次客に近い方、煙草盆を正客に近い方に、正客と次客の間に両方とも置いても良い。

席入りを始めると、腰掛を整理するが、それは詰(末客)の仕事になる。
正客は、円座の表を手前にして(裏が壁側になる)、後ろの壁に立て掛けて、蹲踞に向かう。
次客は、正客の後を追いかけない様に、少し余裕を持って、同じ様に円座を後ろに立て掛けて、正客に続く。
詰(末客)は、円座・煙草盆・手あぶりを元の様に片づけて蹲踞に向かう。


2014年11月19日 「腰掛 煙草盆 円座 扱い」を参照のこと。




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2016年2月22日月曜日

花所望 茶事 (2)

後座で亭主は、茶道口を開けて、

花台を床の上に置いておいた場合は、
(1)膝前に何も置かずに、正客に花を所望する。 又は
(2)茶碗を膝前に置いて、花を所望する。

花台を床に置いておかなかった場合は、
(3)花台を膝前に置いて、茶道口を開け、花台を床に運び出し、
茶道口外に下がって、花を正客に所望する。

正客は、次客以下に会釈をして尋ね、次客以下が辞退する時には、必要であれば亭主に花入についてお尋ねをした後、
花入の前に行き、花入をよくよく拝見する。

花台の前に移り、花台を手前に引き寄せ、花を見繕って、小刀で花の下端を切り揃え、
花入の前に戻って花を入れる。

花を花入に入れるには、
座ったまま入れるか、立って入れるかの二通り。
出来るだけ、膝で立って入れない方が良い。

正客が花を入れ終わった頃、又は花台を整理し始めた頃、
亭主は、水を差す様に正客にお願いする。
水を差す事によって、以後花を直しませんと言う事になる。

正客は、水を差し加え、花台を整頓して、切り屑を花台の手前の小刀の下あたりにまとめる。
花台を元の位置に戻し、花をもう一度見た上で、席に帰る。


亭主は、茶道口を出て、床前に進み、花を拝見し、
膝を少し動かし、正客の方に向かい花の礼を述べる。

亭主は、花台を下げる。
茶碗を持ち出し、濃茶となる。

亭主が茶碗を膝前に置いて、花を所望した場合は、
正客が花を入れた後、茶碗を持って席に入り、点前座に進んで茶碗を茶入と置き合せてから、
花台を取りに床前に進む。
花台を水屋に下げた後、建水を持ち出し、濃茶となる。

茶事の終わりに、客が退出する時、

亭主は、「お花はそのままお残し下さい」の挨拶をする。

亭主からその挨拶がない時は、客は花入から花を取って懐紙に載せ、
床の隅に置いて退出する。



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2016年2月7日日曜日

花所望 茶事 (1)

習事の花所望では定まったやり方で行われるが、
ここでは実際の茶事で、花を所望される(所望する)場合の心得を記す。
習事とは若干異なる部分もある。

花所望は後座の初めに行われる。
よって、茶室は濃茶の飾付となる。
花入は、後座であり掛物は外してしまうので、通常、床正面の大平壁に掛けるか、床の中央に置くかのどちらかになる。

花台には、花・小刀・水次・茶巾を用意する。
花台は良く濡らして、水を切っておく。
客より到来の花であれば、全部の花を載せて置いても良い。

花の上部を花台の左斜め上にして、右斜め下に向かって、斜めに置いておく。
花には、よく水をかけて濡らしておく。
畳んだ茶巾をのせた水次を花台の右上隅に、花に平行に置く。
小刀は、花に平行にして、花台の手前の枠に、柄を掛けておく。

後座の客席入り前に、花台を床に置いておく場合と、置いておかない場合の二通りある。

花台を床に置いて置く場合にも、
何も膝前に置かずに襖を開ける場合と、仕組んだ濃茶の茶碗を膝前に置いて襖を開ける場合の二通りある。

花台を床に置いておかない場合には、膝前に花台を置いて襖を開ける。

花台を置く位置は、床の下座三分の一位。

碌々斎は、花台を前もって床に飾っておいた方が良いと言われている。

花入には、水を七分目~八分目入れておく。 当然ながら、花は入れておかない。
掛け花入の場合は、掛ける穴を上端にして、水を七分目~八分目入れる。

花台に載った花から、花入に入れる花を作るには、
先ず主になる花を選び、左手に持たせておき、次に後ろに添える花を選び、右手で左手の主になる花に添わせる。
花を揃えたら、花入の長さに合わせて、下端を小刀で切りそろえる。

お茶の花は、少し寂しい方が良いと即中斎は言われている。

小刀で花を切るには、
選んで花入に入れる様にまとめた花を横にして、左手で持ち、右手に持った小刀を枝に当て、
刃の部分で枝を右手で折って、押えたまま右斜め下に、右手の小刀を引いて切る。
切り口は奇麗に切れる訳ではない。ギザギザに切れている。その方が水揚げも良い。

花入に水次で水を加えるには、
水を花入の右から入れるか、左から入れるかによって異なるが、
右から入れる場合は、水次の上の茶巾を右手で取り、左手に持ち替えて、水次の口の下に当て、水次を右手で上から握って、水を加える。
左から入れる場合は、この逆となる。

二重切り、三重切りの花入では、前もって全部に水を入れてある。
花はどれか一か所に入れるが(下から入れた方が良い)、水は上から下へ向かって全部に加える。

花を客が持参する場合は、よくよく考えた上で持参する事。
亭主は吟味して花を用意しているからである。
客が花を持って来れば、亭主は気に入らなくてもそれを使わざるを得ない。

お菓子も同様である。
明らかに水屋見舞いに見える菓子以外は持参しない方が賢明だ。
逆に、亭主としては、水屋見舞いに頂いた菓子が薄茶に使えるものであれば、出来るだけ薄茶の菓子に加えて出す事を考えた方が良い。





2016-10-2 修正


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2016年1月30日土曜日

長板 色々

茶の湯の棚の始まりは、
大応国師南浦紹明が宋(南宋)から帰国の時に持ち帰られた「台子」と言われている。
やがて改良されて、茶の湯に使い易い形の台子になった。
更に、天板を省き、その天板だけを地板にしたような「長板」が生まれた。

長板は、小が炉用、大が風炉用となっている。
炉・風炉兼用もある。

好み物も種々あるが、一例を上げると、

真塗
 大 ・・ 利休形
 小 ・・ 如心斎好み
 炉・風炉兼用 ・・ 即中斎好み

溜塗 ・・ 久田宗全好み


 大 ・・ 利休形
 小 ・・ 利休形

一閑 黒
 大 ・・ 随流斎好み
 小 ・・ 随流斎好み

黒 カキ合せ塗
 大 ・・ 了々斎好み

青漆爪紅
 大 ・・ 惺斎好み
 小 ・・ 啐啄斎好み

松 スリ漆
 大 ・・ 惺斎好み
 小 ・・ 啐啄斎好み

一閑 溜塗
 炉・風炉兼用 ・・ 碌々斎好み

等々

長板を置き付ける位置は、
道具畳の中央から8寸(約24cm)向こうに置く。
左右は、中央に置き、客付きに畳目一目寄せるが、畳の空き具合によっては、左右同じ目数にしても良い。
左右の空きが少ない場合は、例えば左右畳目2目づつ空けた方が置きやすい。



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2016年1月27日水曜日

小袋棚 炉 濃茶点前

左側の地板に、火箸・柄杓を差した柄杓立て、前に蓋置を仕組んだ建水を飾る。

地袋の戸を外し、地袋の左側に立てかけ、水指を前に出しておく。
地袋の上には、茶器を飾る。

小袋棚全体の左右中央の畳の上に、茶入を飾る。

茶碗・茶入、茶入・茶筅の置き合せは、小袋棚左右中央を中心とする。

点前は、2016年1月19日「台子・長板 諸飾 炉 火箸・建水・蓋置の扱い等」を参照のこと。

茶入の仕服は、地袋の上、左 手前隅に置く。

中仕舞を解く時、水指の蓋は、左側風炉先屏風の枠に立てかけて置く。
水指の蓋のツマミは客付き側。蓋裏を風炉先屏風の枠に当てる。

点前の終りには、水指は地袋から出したままにして置き、
建水・茶碗を引いた後、水次薬缶を持ち出し、
地袋の前に座って、水指を膝前畳の上に下し、水を加える。

水指の蓋は、水指の向こう側地袋の溝に蓋の向こう端をかけ、水指にもたせ掛けて置く。
右手で蓋のツマミ、左手(親指は上)で蓋の左横、右手(親指は上)で蓋の手前を持って、蓋を開け、置く。
閉める時は、そのうち返し。

又は、風炉先屏風に立て掛けて置いても良い。

水指を地袋の中に入れ、
左手で地袋の戸の上から三分の一程の所を掴み、膝前に持って来て、
右手で戸のツマミを持って、右手で地袋の上の溝に戸をはめ入れ、次に下の溝に戸の下端をはめて、戸を閉める。



下記も参照
2016年1月27日「小袋棚 即中斎好み

2017-2-14 修正

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小袋棚 即中斎好み

即中斎が昭和35年頃好まれた棚に、小袋棚がある。

利休袋棚から天板や柱、中棚を外した様な形をしている。
地袋の戸は、ケンドン蓋で、襖のツマミは南鐐である。
板の部分は糸目で、塗りは、溜塗。

棚の左側の地板は取り外せるので、右側の地袋だけでも使えるようになっている。

長板の諸飾りの様に柄杓立て、仕組んだ建水を載せて炉に使うことが出来るし、
地板に風炉を載せて使う事も出来る。
炉・風炉両用である。

即中斎宗匠は、特に定まった使い方、点前の手順は決められなかったそうである。

地板と地袋両方を使えば、大棚としての使い方になると思う。


下記も参照
2016年1月27日「小袋棚 炉 濃茶点前
2016年1月19日「台子・長板 諸飾 炉 火箸・建水・蓋置の扱い等

2017-2-14 修正

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2016年1月19日火曜日

台子・長板 諸飾 炉 火箸・建水・蓋置の扱い等

諸飾の場合、柄杓立に柄杓・火箸を差し、その前に蓋置を入れた建水を飾っておく。

火箸の扱い

「座り火箸」

点前の始めに、茶碗を持って出て、勝手付きに仮置きした直後に、
又は、茶碗と薄茶器を持ち出して、棚前中央に置き付けた直後に、
何かを挟み取る様に火箸を右手で握って、柄杓立から抜き、
膝上で左手、右手、左手(手の甲は上)で火箸の頭近くを握って、
棚左側畳の空きの中央に置く。
一寸(3cm)位火箸の頭を棚から出しておく。

「立ち火箸」

点前の終わりに、建水を持って立つ直前に、
棚左側の火箸を左手(手の甲は上)で取って、
膝前で、右手、左手で横にして、右手で火箸を挟み取る様に握って、
柄杓立に火箸を差す。
火箸の先は、柄杓の柄の手元を挟んでいる。

建水・蓋置の扱い

点前の始まりに、棚前正面に座った状態で、
蓋置を入れたままの建水を、両手で取り、左手で身体の左側定所に置く。
右手で蓋置を取り、左手に載せて居前(外隅中心)に廻る。
蓋置を右手で炉の右横定所に置いて、柄杓は柄杓立に立てたままで、
「どうぞ、お楽に」の挨拶。

柄杓の扱い

柄杓を蓋置に引く事はない。
通常であれば蓋置に柄杓を引く場合でも、必ず柄杓立に戻す。
居前(外隅中心)から右手で、柄杓立から柄杓を取ったり、戻したりする。

茶入の仕服を置く場所

台子の場合、天板の左側勝手付き手前に載せる。

長板の場合、決まった場所がある訳ではないが、
勝手付き畳の上、茶碗を仮置きする所に、置いておけば良い。

その場合、拝見の時茶碗の仮置きをする方法に、二つのやり方がある。

一つは、
仕服を右手で右の方に動かし、茶碗を仕服があった場所に仮置きする。

又は、
茶碗を取り敢えず仕服の右に置いておき、
仕服を拝見に出す時、仕服を右手で取り、左手に預け、茶碗を仕服があった場所に置き直し、
左手に預けた仕服を右手で拝見に出す。

中仕舞の時

柄杓を構えて釜の蓋をした後、
居前のまま、直ぐに柄杓の節上を右手で取って、柄杓を柄杓立に戻す。
蓋置を右手で取って、左手に持たせ、身体を棚正面に廻って、
蓋置を右手で柄杓立の前に置く。
身体を客付き正面に廻って、お客のお尋ねに答える。

柄杓立の前に置く蓋置の位置は、蓋置を入れて建水を置いた時に蓋置がある位置。

中仕舞を解く時

末客が濃茶を吸い切られたら、客付き正面から、棚前正面に身体を廻し、
右手で蓋置を取って左手に載せ、居前に戻る。
蓋置を炉の右定所に置いて、居前のまま右手で柄杓立から柄杓を抜いて、左手で構えて、釜の蓋を取る。
後はいつもの通り。

女子は、客付き正面から居前に廻り、帛紗をさばいて右膝横に置き、棚正面に身体を廻し、蓋置を取る。

点前の終わり

水指の水を釜にさして、釜の蓋をする。
居前のまま柄杓を柄杓立に右手で戻し、
水指の蓋をする。
正客から拝見を請われる。
蓋置を左手に載せて棚正面に廻り、柄杓立の前に置く。
茶碗を仮置き、茶入を左手に載せて、客正面に廻り、茶入を拝見に出す。
茶杓、仕服も出す。
火箸を柄杓立に戻して、建水を持って立つ。

居前から水指の蓋を取る時は、
右手で蓋のツマミ、左手、右手で蓋を水指に立てかける。
蓋をする時は、そのうち返し。

点前の終わりに、建水を棚に飾る時

水指にヤカンの水を差し加えた後、清めた建水を持ち出す。
棚前正面に座り、建水を膝の線より少し前に進めて置いて、
蓋置を取って、右手で建水に入れ、両手で建水を取り上げ、両手で棚に飾る。
建水に蓋置を入れた後、建水を取り上げる時に両手で扱いたいので、持ち出した建水は膝より前に少し進めて置いている。

又は、拝見物がある場合には、
拝見物を取りに出る時、清めた建水を持って出て、建水を棚に飾ってから、拝見物の前に移動してお尋ねに答えるやり方もある。

点前の途中で、棚前正面に身体を廻して、蓋置を置いたり取ったりするが、
居前のままで蓋置を置いたり取ったりするやり方もある。
男女共に同じ様にする。

蛇足であるが、大棚(長板も含む)の場合、
炉では、茶入を飾る位置は棚の左右中央。
また茶碗と茶入(薄茶器)、茶入(薄茶器)と茶筅を置き合せる位置は、棚の中央を中心として置く。
風炉では、棚の中央ではなく、水指前に置く。
風炉の一つ置きの場合でも、本来水指置く位置の前あたりに置く。

飾る建水には、曲物は使わない。唐金や焼物の建水を使う。


2017-01-10 追加
2017-08-02 修正
2019-05-05 修正


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2016年1月11日月曜日

柄杓を構える 左手 握り方

左手で柄杓を構えた時、どう握るか。

柄杓の柄の節の下を握る訳だが、

左手の人差し指~小指までの指先で柄杓を握る。

人差し指・中指・薬指・小指の指先を、柄杓の柄の裏に当て、
親指先の腹で、柄杓の柄を表から押して、柄杓を支える。

よって、人差し指~小指の指先が柄杓の柄から大きく外に、はみ出す事はない。

人差し指~小指の腹では柄杓の柄は握らない。


参照
2021年6月19日「竹の蓋置



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炉 長板 諸飾り 炭点前

小棚の炭点前と異なる部分を重点的に記す。

炭斗には火箸を仕組まず、鐶は炭斗の中、手前中央に切れ目を上にして立て掛けておく。

灰器を定所に置く。
灰器の正面は身体の方を向く。(斜めに置く)

身体を炉正面に向けて、炭斗から羽箒を下す。

身体を長板斜めに廻り、右手で柄杓立から火箸を抜き取り、左手をあしらって、火箸の先を向こうにして左手に持ち、持たせたまま身体を炉正面に戻り、右手で炭斗の左に置く。

女子は、長板正面まで体を廻す。

炭斗から香合を下ろす。

炭斗から鐶を右手指先に掛ける様にして取り出し、鐶の切れ目を身体の方に向け、左手に持たせて、釜の蓋をする。

女子は、帛紗で釜の蓋を閉めてから、鐶を取る。

釜を釜敷に上げて、釜正面に身体を向け、釜の据わりを見た後、釜を少し左に引き寄せて、長板と平行になる様に直す。
鐶を持ったまま、身体を長板正面に向かい、釜を勝手付まで引いて、更に斜めに廻して鐶を外す。

女子は、鐶を釜に預けて、身体を長板正面に向ける。

羽箒で炉を掃き、灰をまき、炭をつぎ、香をたく。

客は、亭主が羽箒で炉を掃いた所で、正客から順に、亭主に一礼して炉の傍に寄る。
客は、炭を拝見している時には、余り炉に近寄り過ぎない様に注意する。
炉の周りを客の頭が取り囲むなど以ての外である。
添炭がつぎ終わられた所で、客は詰から順に亭主に軽く一礼して、元の席に戻る。
客の一礼には、次礼の意味はない。

灰を撒く高さは、炉壇の上端と五徳の爪の中間位の高さ。 五徳の爪の少し上から撒く。

香合を拝見に出した後、身体を長板正面に向かい、釜を炉の近くまで引き寄せて、身体を炉正面に廻して、釜を掛ける。

羽箒で釜の蓋を掃き、羽箒を炭斗の上に置く。
そのまま右手で火箸を取り、左手に親指を上にして持たせて、右手で羽箒を取って、炭斗の上で火箸の先を先端に向かって二度払い、左手を返して親指を下にして、一度払い、羽箒を炭斗に戻す。

左手に火箸を持ったまま、身体を長板に斜めに向き、火箸を右手で挟むように持ち直して、右手で柄杓立に戻す。

女子は、火箸を左手に持ったまま、長板正面まで身体を廻す。

後はいつもと同じ。

羽箒を香合の右側に置く時は、畳の空きの中央位に縦に置く。

風炉の場合の羽箒で火箸を清めるやり方について、「風炉 炭点前 炭斗動かす 羽箒」の項に記載しているので、参照のこと。

下記も参照
2014年12月30日「紙釜敷 炉 風炉
2015年1月7日「炭台 炭その他の配置
2015年1月7日「炭台 炭点前 炉
2016年1月19日「台子・長板 諸飾 炉 火箸・建水・蓋置の扱い等
2016年5月11日「炉 炭点前 炭斗動かす 羽箒
2016年5月11日「風炉 炭点前 炭斗動かす 羽箒

2017-12-18 参照項目を追加
2021-7-13 修正・追加


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炭をつぐには

炭点前に於いて、炭斗に仕組んだ炭を全種類使う必要はない。

又、炭をついだ後の姿や炭の数に決まりはない。
炭に火がつき、湯が上手く沸くのに必要な炭をつげばよい。

胴炭の後は、丸ギッチョの様な大きい炭から小さい炭へ、枝炭・添炭の順につぎ終わる。

しかし、胴炭・枝炭・添炭は必ず使う。
但し、
添炭に替えて、割ギッチョで炭をつぎ終わる事もある。
また、後炭では、胴炭を使わない事もある。

管炭と添炭などで五徳の爪の足を狭くはさむ形にはしない。
狭くはさまなければ問題はない。

火箸を炭斗に入れる時は、
胴炭がある時は胴炭の炉(風炉)側に、ない時は炭斗の中央に入れる。



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大棚 初炭 羽箒・香合を飾る(飾らない)

初炭で、羽箒と香合を飾る(飾っても良い)大棚と飾らない大棚がある。

台子
天板に羽箒・香合を飾ることはない。
茶入を天板の中央に飾る。

竹台子
諸飾りにして、天板の中央に茶入(薄茶の場合は茶器)を飾る。
天板に羽箒・香合は飾らない。
但し、風炉一つ飾りの場合、初炭で天板の客付き三分の一程に羽箒・香合を飾ることもある。

紹鴎棚
天板の客付き三分の一程に羽箒・香合を飾る。
中棚の中央に茶入を飾る。

利休袋棚
右側中棚に羽箒・香合を飾る。
左側中棚に茶入を飾る。
天板には何も飾らない。

長板
飾る場所もないので、羽箒・香合を飾ることはない。

炉の初炭で羽箒・香合を飾った場合、
炭斗、灰器を持ち出してから、
身体を大棚斜めに向かい、羽箒を右手で取って、膝前に真横に置き、
そのまま更に、右手で香合を取って、左手に受けて持たせ、
右手で膝前の羽箒を取って、身体を炉正面に廻して定所に置く。

女子は、
棚正面に向かい、羽箒を右手に取って、左手をあしらって右手にしっかり持たせ、
炉正面に廻って炭斗横に置く。
更に、もう一度、棚正面に廻って香合を右手で取って、左手に受けて持たせて、
炉正面に廻って定所に置く。

女子も、棚正面に向かわずに、男子と同じく棚に斜めに向かって、羽箒と香合を取るやり方もある。
棚正面に向いた時と同様に羽箒と香合は別々に取る。

2020-01-12 追加


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