2021年5月2日日曜日

七種蓋置(しちしゅ ふたおき)

 火舎(ほや)、五徳、一閑人(いっかんじん)、三つ人形、栄螺(さざえ)、三つ葉、蟹(かに)を七種蓋置と言う。

「定本 茶の湯表千家(千宗左 著)」の七種蓋置の項目は解りにくい点があるので、ここに書いてみた。

昭和10年代(第二次世界大戦)以前までは、七種蓋置に瓶に穴が開いた形をしている夜学蓋置を加えて、「飾り蓋置」と言った。
「飾り蓋置」は、台子・長板に用いて、その他の棚には用いなかった。
また風炉の台子には用いなかったらしい。

但し、栄螺(さざえ)蓋置だけは小卓にも用いた。

その頃までは、「飾り蓋置」には、釜の蓋は置いても、柄杓を引くことはしなかった。
現在では、火舎蓋置を除き小棚にも使い、柄杓も引いている。

今は、昔とは随分違った使い方をしている。

1.火舎(ほや)

最も格の高い蓋置で、台子と長板の諸飾に用いる。
建水に仕込んで水屋から持ち出す事はない。

点前の始めには、蓋を閉めたまま定所に出す。
釜の蓋を取る前に、火舎を左手に載せて、火舎の蓋を左から右に打ち返して、火舎の身に戻し、定所に戻す。
柄杓を柄杓立から取って構えて、釜の蓋を載せる。

点前の終わりに釜の蓋をしたら、柄杓を柄杓立に戻した後、火舎を左手に載せて、蓋を右から左に打ち返して、定所に戻す。

2.一閑人(いっかんじん)

人形が井戸を覗き込んでいる。
人形の顔の向きを正面にする。井戸の向こう側に人形がいる事になる。

点前の始まりには、
建水から右手で蓋置を取り、左手に載せて人形の頭を釜の方に倒して、定所に置く。
柄杓を取って、蓋置に引く。
点前の終わりには、
柄杓を取って、右手で棚に飾る。
蓋置を取って左手の上に載せ、人形の頭を元に戻して、人形の顔を正面を向けて棚に飾る。

3.五徳


五徳の爪の一本を正面にする。
建水に仕込む時、棚に飾る時は、輪を下にする。
釜の蓋を載せる時、柄杓を引く時は、輪を上にする。

点前の始まりには、
建水から右手で蓋置を取り、左手に載せて左から右に打ち返して輪を上にして定所に置く。
柄杓を取って、蓋置に引く。
柄杓の柄の下に一本の爪が来る。

点前の終わりには、
柄杓を取って、右手で棚に飾る。
蓋置を取って左手の上に載せ、右から左に打ち返して輪を下にして、爪の一本を正面にして棚に飾る。

4.三つ葉


建水に仕込む時、棚に飾る時は、小さい葉を上にして、小さい葉一枚が手前にある。
柄杓を引く時、釜の蓋を載せる時は、小さい葉を下にして、小さい葉一枚は手前のままにしておく。

点前の始まりには、
建水から右手で蓋置を取り、左手に載せて左から右に打ち返して小さい葉を下にして定所に置く。
柄杓を取って、蓋置に引く。
柄杓の柄の下に小さい葉一枚が来る。

点前の終わりには、
柄杓を取って、右手で棚に飾る。
蓋置を取って左手の上に載せ、右から左に打ち返して小さい葉を上にして、小さい葉一枚を正面にして棚に飾る。


5.栄螺(さざえ)



建水に仕込む時、棚に飾る時は、栄螺の殻を上に、尻尾を左にする。
柄杓を引く時、釜の蓋を載せる時は、栄螺の殻を下に、尻尾を右にする。

点前の始まりには、
建水から右手で蓋置を取り、左手に載せて左から右に打ち返して栄螺の殻を下に尻尾を右にして定所に置く。
柄杓を取って、蓋置に引く。

点前の終わりには、
柄杓を取って、右手で棚に飾る。
蓋置を取って左手の上に載せ、右から左に打ち返して栄螺の殻を上に尻尾を左にして、棚に飾る。


6.三つ人形


建水に仕込む時、棚に飾る時は、人形の内 衣装の異なる一人を手前にする。
柄杓を引く時、釜の蓋を載せる時も、衣装の異なる一人を手前にしておく。
衣装の異なる一人を手前にしておくだけで、特別な扱いはない。

但し、人形が輪の外でなく輪の内を向いている時(顔の向きが通常の反対を向いている時)には、衣装の異なる一人を向こうにして、向こう側から正面を見ている様にする。


7.蟹(かに)

建水に仕込む時、棚に飾る時は、蟹の頭を手前にする。
柄杓を引く時、釜の蓋を載せる時も、蟹の頭を手前にしておく。
蟹の頭を手前にしておくだけで、特別な扱いはない。


「定本 茶の湯表千家(千宗左 著)」の七種蓋置の項目では、
柄杓を柄杓立に立てておく場合を中心にして書いてあるので、解りにくい説明になっている。


2021-5-14 追加
2021-5-11 修正


このページ最下部の「ホーム」をクリックすると、私のブログのホームに飛びます。

12 件のコメント:

  1. お茶は奥が深いですね
    ややこしいのはつい後回しにしがちですがわかりやすい解説でとても勉強になりました。

    返信削除
    返信
    1. 五徳の蓋置でコメント頂いたので、七種蓋置で1項書いて見ました。
      定本茶の湯表千家を丁寧に読んでいないものですから、色々出てきますね。

      削除
  2. さざえの蓋置の向きですが、仙谷様ブログのお写真と定本の写真では向きは同じですが、仙谷様は「尻尾を左」で定本では「かしらを左」と書いてあり、何となくコロッとしたほうが頭かな?と思っておりましたので、仙谷様のご記載ミスかなと思いました

    そこで図鑑でサザエを調べましたところ、尻つぼみっぽく見える方が頭なのですね!

    深いご見識に大変驚き、学ばせていただきました
    ありがとうございました

    返信削除
    返信
    1. 尻尾が頭(かしら)なんですか。
      知りませんでした。尻尾の様に見えるもんですから、尻尾と書いただけでした。
      あそこの部分にはサザエが食べた物が袋詰めになって、入っているんですよね。
      言ってみれば腸みたいな物ではないでしょうか?
      食べれば美味しいです。私は好きです。

      削除
  3. 丸卓など、点前の終わりに柄杓・蓋置を飾れない場合、いつ蓋置を打ちかえせば宜しいでしょうか
    打ち返すタイミングが無いので、打ち返さないままの蓋置と柄杓建水を水屋へさげることになりますか
    五徳は打ち返すととても持ちにくい気もします
    どのように扱ったら宜しいのでしょうか
    よろしくお願い申し上げます

    返信削除
    返信
    1. 柄杓立のある場合に使っていた昔と違い、小棚でも使うようになった現代に起きる問題ですね。
      打ち返さず持って帰っても宜しいかも知れませんが、
      以下のようにすれば打ち返せます。

      点前の終わりに、
      柄杓を取って、建水に落として掛け、
      右手で蓋置を取って、左手の上で打ち返し、
      炉であれば左手にのせたまま棚正面に回り、
      取り敢えず、柄杓の柄の下に蓋置を置き、
      柄杓を取って、右手に持たせ、更に蓋置も右手に持たせ、
      建水を左手に持って、水屋に戻る。

      如何でしょうか。

      削除
  4. この件からも、仙谷様書かれていたように、杓立てがある場合に使われていたということがよくわかりました

    一つ前の段階(建水の後ろに置く時)に打ち返してしまえば宜しいですね

    やはり打ち返さずに持ち帰るのはおかしい気がしますので、そのように致します

    今回も貴重なお教え、誠にありがとうございました

    返信削除
  5. はじめまして、初コメント致します。
    私の先生に頂いた、昭和41年発行の茶の湯表千家での七種蓋置の扱いに?と思っておりましたのでこちらのブログで疑問が氷解しました。その本の通りのタイミングで蓋置を打ち返すと、小棚の場合は左手に柄杓を構えるのでおかしなことになるなあと思っていたものですから。昭和10年くらいまでは長板台子のみで使用していたなど、勉強になりました。ありがとうごさいます。

    返信削除
    返信
    1. 有難うございます。
      疑問点などありましたら、コメントを下されば、分かる範囲でお答え出来る思います。

      削除
  6. この蓋置たちには季節があるのでしょうか?例えば、栄螺や蟹は夏のような感じがしますが、何か決まりのようなものがありますか?

    返信削除
  7. どうでしょうか。
    特に決まりはなく、季節は問わないとは思いますが、季節にふさわしい物は矢張りその時期に使うと思います。
    おっしゃる様に、蟹や栄螺は夏の物ですね。
    五徳も炉に五徳を使わない時に(釣り釜など)よく使われますね。
    七種蓋置と限らず、蓋置を選ぶ時は茶事や茶会のテーマや考え方に沿った蓋置を選ぶと思います。

    返信削除
  8. なるほど~。五徳を使わない釣り釜などの時に五徳の蓋置を使うことが多いというのは知りませんでした。
    ありがとうございます。

    返信削除