茶事の箸、黒文字など
膳の箸(長さ 8寸5分)は、右側を膳の端に掛けて、左側を膳の中に落として置く。
箸は右上左下の斜めにして、膳に置く(掛ける)ことになる。
利休形の膳の箸は、杉で作り、長さ8寸5分、両端に向かって少し削って細くしてある。
客も、食事中の箸の置き方は同じにする。
使っている途中で、箸の左端の下に懐紙を敷く人もいるが、私は必要ないと思っている。
(理由)
膳は汚い物ではない。
食べている箸先が汚れているから、それを気にするのだろうが、膳が汚れたのなら、最後に軽く懐紙で拭いておけば良い。
言うまでもないが、
懐石の最後に箸を落とす時には、箸全体を膳の中に落とす。
膳が丸くて、手前にスペースがない時には、器を動かして膳の中央の広い部分に落とす。
八寸盆でも、青竹の両細(長さ 8寸5分)は同じ様に左端を落して置く。
焼き物では、青竹の両細(長さ 8寸5分)は、器の端から端に水平に置く。
鉢類も、白竹の両細(長さ 8寸5分)は縁に水平に置く。
強肴を小さな器に入れて出す時には、杉の箸(長さ 6寸)は水平に置く。
菓子を縁高で出す場合、
黒文字(長さ 6寸)は蓋の上に載せて出す。
客は一段取って置いた時には、黒文字は右側を端に掛け、左側を縁高の中に落とす。
喰籠に菓子を入れて出す時には、
黒文字(長さ 6寸)は蓋の上に載せて出す。
客は蓋だけを次客に回す場合には、黒文字は喰籠の身の縁に水平に載せて回す。
なお、喰籠の蓋だけを次客に回す事はお勧めしない。
茶事の時は特に注意すべきである。
身と蓋は一緒の物だからである。
身に蓋をして一緒に回しても、それによってどれ程 時間が長くなる訳でもない。
菓子を鉢に入れて出す時も、
黒文字(長さ 6寸)は縁に水平に置く。
鉢が大き過ぎてどうしようもない時は、左側を落としても仕方ないだろうが、
出来たら、斜めに置く等水平にする工夫をすべきだろう。
ぜんざい等を菓子として出す時には、杉の箸(長さ 6寸)1本と黒文字(長さ 6寸)1本を一膳(1セット)にして、水平に置く。
小さな丸盆にぜんざいの椀を載せて一人づつに出す時には、右側を縁に掛け 左側を盆に落して置く。
昔は、菓子に黒文字を付けて出された時には、客は黒文字を持って帰ったらしい。
同じく、杉の箸1本と黒文字1本を一膳(1セット)にして付けられた時には、杉箸は折って菓子器に入れて返し、黒文字は持って帰ったらしい。
昔は、黒文字はその茶事の為に亭主が自分で削っていたから、客は頂いて帰ったのだろうが、現在では亭主は黒文字を買っており、使い回しているので、返すべきだと思う。
杉箸も折らずに返すべきだと思う。
当然だが、
杉でも竹でも、水に漬けて濡らして、軽く押さえ拭きして出す。
茶事であったら、濡らした箸や黒文字を、濡らして絞らないままの布巾の間に入れて置いて、必要に応じて出して使ったら宜しい。
黒文字も、手に入るのであれば先が矢筈に切ってある物が良い。
矢筈の黒文字(6寸)が表千家流。
強肴などに使う杉箸(長さ 6寸)も同様に表千家では先を矢筈に切った物を使う。
黒文字や杉の箸の形・置き方は、流儀によって違いがあるようだが、上記は表千家流の方法となる。
以上